将棋とAI ②

<ネットTV、AIの貢献>

 数年前からサービスが始まったネットTVであるABEMAには将棋専用チャンネルがあり、アカウント登録すれば、無料で毎日将棋が見られる。放映当初は、従来の将棋の放送と同様、対局姿と将棋盤を映し、プロ棋士が解説するというもので、当時は、まだまだ将棋に詳しい人向けのニッチな番組だったように思う。

ところが、ある時期から AI の分析による形勢判断、次の最善手などの情報をリアルタイムに表示するようになり、状況は一変した。AI により、現局面の形成判断として、棋士Aの期待勝率が30%、その相手棋士Bが70%などと表示されれば、将棋に詳しくない人でも、棋士Bの方が有利だと理解できるし、棋士Bの指した手でその数値がひっくり返れば、棋士Bが悪手を指したんだなとすぐに理解ができる。このことにより、自分では将棋は指さないが見るのは好きという、いわゆる「見る将」と呼ばれる新たなファン層を広げることに大きく貢献したであろう。 しかも、そのABEMAの将棋チャンネル放映開始と、藤井聡太のデビュー時期が重なり、将棋はよくわからなくても、藤井の指す手を少しでも体感したいと願う「見る将」のニーズにバッチリと答えたのが、AIだったと言える。その数値を見て観戦することで、臨場感を持って藤井の強さを感じ取ることができ、長く将棋ブームが続く一因になったことと思う。

※本コラムは2023年10月に執筆したものを掲載しています。

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